AWS上でFileMakerソリューションを運用する手順(第2回)
2016年03月18日 03:05 PM
AWS
Amazon Web Services(以下AWS)でアカウントの登録からFileMaker Serverを
EC2インスタンスにインストールするまでの手順の、今回は2回目。
(事前準備2)プラン検討とファイルの準備 です。
これはシリーズでお伝えしています。
- (事前準備1)AWSのアカウント作成とクレジットカード登録
- (事前準備2)プラン検討と見積概算(今回)
- AWSの設定 その1
- AWSの設定 その2
- AWSの設定 最終設定
このブログではFileMakerソリューションをAWS上でどのように活用するかが大きな目的であり、
したがって「無料枠」でとりあえずやってみたいという方向けではありません。
※そもそもAWSの「無料枠」ではFileMaker Serverを本格的に運用するには無理があります。
詳細は後程。
こんなにあるぞ!サービス
これはAWSのサービスを利用する際に一番初めにサービスを設定するページです。
EC2だけでなく、いろんなサービスが有りどれを選んで良いかわかりません。
ただしご安心ください。FileMakerソリューションをAWSで利用する場合に必要なサービスは
特殊なソリューションを除き、かなり限られているのです。
(利用できるサービスはまだ少ない とも言えますが…)
主にEC2、S3、VPC、RDS等でしょうか。
例えばここでは以下のケースを想定します。
- 「FileMaker Server 14でファイルを社内で販売管理システムとして利用」
- 「FileMakerのファイルは全部で10ファイル、総合計サイズは500MB」
- 「クライアント数は FileMaker Pro14が10台」(2016年5月にバージョン15が発表されました。
しかしほぼ必要なスペックはバージョン14と変わりません。 2016年5月追記)
FileMakerソリューションをAWSで活用する場合は数多くあるサービスのうち
・EC2(クラウド内の仮想サーバー)
を利用するだけでAWSを利用できるのです。
EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)
これがAWSの代表的なサービスのひとつである、いわするクラウド(ホスティング)サービスです。
わずか数分と数クリックでサーバーインスタンスを取得でき、社内にサーバーを構築する手間と
時間を劇的に削減した、革新的なサービスです。
OSからCPUやメモリ、ストレージ(ハードディスク)を自由に選べることと、また簡単に切り替えができます。
EC2もそれぞれの特徴からいくつかの種類に分かれています。
ざっくりとした説明になりますが、
「CPU」「メモリ」「ストレージ」のそれぞれを優先したタイプと、
一方それぞれがバランスの取れたタイプというグループに分かれています。
- M3 バランス重視
- M4 バランス重視の新しいタイプ
- C3 CPU性能重視
- C4 CPU性能重視の新しいタイプ
- R3 メモリ性能重視
- G2 グラフィック性能重視
- I2 ストレージ性能重視
- D2 高密度ストレージ
更にコストを重視した T2 もあります。これはCPUの使用上限(クレジット)が決まっていて、
利用していない時には使用上限(クレジット)が上乗せされるという特徴があります。
それぞれのインスタンスタイプも性能別に細かく分かれています。
例えばC4をWindowsで利用した場合「c4.large」「c4.xlarge」「c4.sxlarge」・・・
というタイプに分かれていきます。
詳細はこちら Amazon EC2 インスタンスについて
さて能書きはともかくFileMakerソリューションに適切なタイプはどれかというと、
ズバリM3かM4、C3かC4になるのではないでしょうか。
これはFileMaker Serverの必要なスペックからおのずから答えがわかります。
例えばFileMaker Server 14の技術仕様を見ると
- CPU 4Core RAM 8GB ハードドライブ 80GB以上+ファイルサイズ
となっています。
(残念ながら無料枠の「t2.micor」などは「CPU 1Core RAM 1GB」であり、
まったく対象とはならないスペックなのです。)
月額利用料金を見積もってみよう
AWSには利用料金を見積もり計算できるページが有ります。
http://calculator.s3.amazonaws.com/index.html?lng=ja_JP
ただしこれを利用する場合は下記のような点を事前に決定もしくは算出しておかなければなりません。
- 利用するEC2インスタンスタイプ(前項の「C3」とか「M4」とか)
- 必要なストレージ(ハードディスク)の容量
- ストレージタイプ(主に3種類あります)
- データ転送量
-
利用するEC2インスタンスタイプ
これはどんなスペックのサーバーを利用するか、ということです。
ちなみに前述の技術仕様に従うと(4Core 8GB)にちかいタイプは
「c4.xlarge」になりますね(4Core 7.5GB)。
2.必要なストレージ(ハードディスク)の容量
この考え方は
- ・FileMaker Serverに必要なサイズ 80GB
- ・利用するファイルのサイズ 500MB(と仮定)
- ・将来増えるであろうサイズ 1GB(と仮定)
特に3番目はそのシステムが過去からどれぐらいの期間でサイズが変更されてきたかを
考えると算出がしやすいかもしれません。
また気軽に増設が出来るので、あまり丁寧に考える必要はありません。
とりあえずここでは100GBを確保します。
3.ストレージタイプ(ハードディスクのタイプ)
汎用 (SSD)、プロビジョンド IOPS (SSD)、マグネティックの 3 つの EBS ボリュームタイプがあります。
ただし詳しい説明となると長くなるので、3つの比較でご説明します。
(パフォーマンスとコストの3つの比較概略)
- プロビジョンド IOPS (SSD) →高
- 汎用 (SSD) →中
- マグネティック →低
ここでは真ん中を取って「汎用(SSD)」とします。
詳しくはこちらをご覧ください。
https://aws.amazon.com/jp/ebs/faqs/
4.データ転送量
これが一番難しいところだと思います。厳密に行うのでしたら転送量測定ツール等(TCP Monitor等)
を利用して行うべきでしょうが、ここでは簡易的に計算してみたいと思います。
各レイアウトを500KB、10人の方が毎日200レイアウトを表示したとしたとして
500KB × 100レイアウト × 10人 ×20日 = 20GB
とりあえずざっくりと数字を出しました。
(本当はもっと厳密に求めるべきでしょうが、ここはざっくりで良いのです。理由は後程)
まとめると
- 利用するEC2インスタンスタイプ c4.xlarge
- 必要なストレージの容量 100GB
- ストレージタイプ 「プロビジョンド」
- データ転送量 20GB
となりました。
さてこれらの数値を前述の見積に入力します。
全てを入力しなくても概算が出るので必要最低限の項目だけ入力をします。
リージョン
まずリーションは「アジアパシフィック(日本)」を選びます。
インスタンス
次に「コンピューティング:Amazon EC2 インスタンス」の緑色のプラスボタンを
クリックしてインスタンスを選択していきます。
「使用率/月」に「100」(電源はずーっとONということです)
「タイプ」を選びOSを「Windows」そしてタイプを「c4.xlarge」選んで右板の「閉じて保存」
ストレージ
「ストレージ:Amazon EBSボリューム」の緑のプラスボタンをクリックします。
ボリュームタイプを「プロビジョンドIOPS(SSID)」を選んで
ストレージは「100GB」と選びます。(その他入力する必要はありません)
データ転送送信
最後「データ転送送信」に「20」「GB/月」と選べば完成です。
(なぜ受信を入力しないのか?これはこのサービスでは受信は無料だからです。)
はい、利用予想料金は「$348.75(115円/$1 として 40,106円)となりました。
さてここで本日の一番大切なこと。
思ったより高いな~ という方が多いのではないでしょうか。
では何が料金の割合が高いかというとこれを見てみましょう。
転送量でもなくEBSボリュームでもなく「コンピューティング」いわゆる
「インスタンスタイプ(c4.clarge)が料金のほとんどを占めていることがお分かりかと思います。
ちなみに転送量送信を「200GB(10倍)」にしても「$373.95」と「$25.2」しか変化が有りません。
しかしインスタンスタイプを「c4xlarge」から「c4.large(2Core 3.7GB)にしてみると
見事にコストは「$198.62」と半分近く下がりました。
一方例えば1日の利用時間を制限してみて(インスタンスを閉じる(スイッチを切る)
という面倒なことになりますが)月の稼働時間を66%としてみると「$233.68」となりました。
FileMakerソリューションの標準的な利用を考えてみると、インスタンスタイプ(サーバーの種類)が
コストの最大の要因であること、次にインスタンスの使用率が大きく要素を占める事が
これでお分かり頂けたかと思います。
次回(第3回)はいよいよAWSを設定になります。
(掲載されている数値やコストはあくまでもダミーデータです。貴社の実際のご利用に従った数値を計算されることをお勧めいたします。)
AWS 課金体系と見積り方法について
https://aws.amazon.com/jp/how-to-understand-pricing/
AWS の課金体系について(資料)
http://media.amazonwebservices.com/jp/cost/AWS-RatesSystem-JP_201310.pdf
簡易見積ツールの説明資料
http://media.amazonwebservices.com/jp/AWS_Simple_Monthly_Calculator_Guide_jp_20150424.pdf