社内の勤怠管理や業務時間を分析するシステム

2013年12月19日 05:00 PM

導入事例


1. 導入した経緯

長野県にあるA工場(仮名)では、1991年から当時のファイルメーカーIIを使って社員の給与計算を行っており、その後も徐々にいろいろなシステムを構築していき、今では基幹システムと連動して、部材管理などのさまざま業務に関わるシステムが稼働しています。
その中で、社員の出退勤は当初タイムカードを使用し、その後各自でFileMakerへ直接入力していましたが、人数が増えてきたことで、全体での一元管理(全体最適)へ切り替えました。ですが、全体を把握できるという利点もありながら、今まで個で対応できていたことを全体で行うために制約も発生し、業務効率が下がる可能性があったので、業務効率を下げないために社員証を使ったFelicaの導入を検討しました。

 

2. 勤怠管理システム

各自が持っている社員証を、カードリーダにタッチするだけで、出退勤データを自動的にFileMakerに取込、データベース化し勤怠管理を行うことができます。
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新しいシステムへの導入に関する反発という点では、カードリーダのシステムが、電車のICカードなどと同じようにワンタッチでの動作なので、使う側の人たちも違和感なく受け入れることができました。
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また、カードリーダに社員証をタッチすると、画面に出勤ですというメッセージが表示される仕組みも取り入れました。
今までは、総務から建物内でバラバラに移動しながら働いている社員へピンポイントに連絡をするためには、特定の場所に掲示したり、各課の管理者へ連絡し次の管理者へ連絡して本人に伝えなければいけないというようにとても労力がかかっていました。
このメッセージを表示することで、例えば総務から連絡を伝えたい本人に「総務に寄ってください」というメッセージを送り、そのメッセージを見た本人が総務へ立ち寄って直接会話をするようになり、1(総務)対多数(社員)であったコミュニケーションが1(総務)対1(本人)になり、本人と総務との間に新たな信頼関係が生まれるという二次的な効果もありました。また直接会話することがなくても、メッセージには確認ボタンがついており、メッセージを見た本人が確認ボタンを押すという仕組みになっているので、TwitterやLINEに似たコミュニケーションの効果を生んでいます。

 

3. 業務時間分析システム

「無駄をなくそう」と考えたときに、ただ社員に提唱するだけではなく、実際に一人一人の社員が日々のどの業務にどのくらいの時間をかけているのかを調べなければなりません。そこで、1日にどの業務にどのくらいの時間がかかっているのかを調べ、数値化しグラフにすることを試みました。説明では簡単なようですが、実際に行うには社員の方の協力がなければ実現できません。

では、どのように計測を行ったのでしょうか。

数人の社員に、日々行っている業務がそれぞれ記載された複数のICカードを渡し、そのカードをその業務を行っている最中ずっとカードリーダに刺しておきます。席を離れる際は他のカードを置きます。その時間をFileMakerで読み込むことでそれぞれにかかる業務を計測します。z

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業務にかかる時間を計ることで、業務時間を数値化しそれをさらにコストにして換算します。そうして例えばアウトソーシング(外注)にできることがないか、外注にしたことでコストダウンができるのかなど実態をベースにした検討が可能になります。まだ試験段階で実際の運用にはなっていないそうですが、FileMakerではこんなこともできるのです。

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4. 海外の工場とのリアルタイム生産管理システム

A工場(仮名)には、海外にも生産を行う工場があり、その工場との発注や生産管理のやりとりをFileMakerで行っています。国際VPNを活用しリアルタイムに海外と繋ぎ、生産指示を出したり、海外工場の生産状況を把握したりプロセスを把握するなどコミュニケーションツールとしての機能も果たしています。

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-何故海外との連携システムにFileMakerを使うことにしたのか。A工場の総務課長さんがこのように語ってくださいました。

『FileMakerを使う理由があります。
一般的な基幹系のシステムでは出来ない事がひとつあります。
システム開発は日本・海外工場、国内の開発者、海外の開発者の連携プレイが必要です。しかし、これは膨大な労力と時間が必要です。また出張費など二次的な費用も多く見込む必要があります。さらに稼働後の仕様変更及び機能追加、そしてバグ対応にシステムの英語対応、複雑なインストール作業の対応も見込まなくてはなりません。

 

ところが、ファイルメーカーではどうでしょう。
インストールには何の心配もありませんが、一番の課題は英語化です。標準機能にあるダイアログを英語に変更すればあっという間にシステムが英語になります。

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ファイルメーカーのホームページにある英語マニュアルを見てくださいと連絡すれば基本機能の使い方はメール一本で完了です。
仕様の決定に困難を極めるケースが多いのでアジャイル開発(※)は魅力的です。システムを稼働したままプログラム変更が自由にできる機能はシステム開発を大きく支援してくれます。例えば、現地から問題があるという連絡が来た際、仕様変更、追加、またはバグなのか即座に確認して対応ができます。ですが、これには現地スタッフとのコミュニケーションが重要になります。メールでのやり取りの際、現地の天候など確認し雑談メールを送るなど工夫しています。

ファイルメーカーを活用する事で海外と国内を一元管理するシステムを実現し、現地で今困っている事を即座に解決できるアジャイル開発が海外と国内の新たな信頼関係を築きました。コミュニケーションの効率が良い関係で、少人数での開発に成功しました。刻々と、現地の生産状況がリアルタイムに変わるのを見ると何か不思議で新たな可能性が見えてきます。』

※アジャイル開発・・・開発プロジェクトの期間を短期間に区切り、開発工程を一通り行って部分的に機能を作成し、段階的にシステムを完成させていく開発方法。⇔ウォーターフォール開発

 

このシステムの中で一部ユニークなTranslationツールというものがありました。
海外工場の人は日本語が分かる人が多いのですが、漢字を読むことができないので、やりとりによく使う文章や単語を日本語-ローマ字-英語をそれぞれマスタに、現在1285も登録されており、フィールドの切り替えをしたり、辞書的な使い方をしたりすることができるそうです。

 

5. 今後の試み

A工場(仮名)では、現在工場内にある機器のマニュアルをその機械に近づくだけでiPadに表示できるようにする試みを考えています。工場では多数の大きな機械が動いていますが、それに対し各機械に常時人がついているわけではなく、機械には常に青・黄・赤のランプのいずれかがついており、青は正常だが、赤く点滅すると職員がその機械を確認しにいくようになっていて、各社員は複数の機械を確認する行き来するのですが、その範囲はとても広く1日10㎞近く歩くこともあるといいます。

その機械に対するマニュアルも数が多く、500種類2000頁以上という膨大なものになり、検索し開くだけでも大変な作業になります。現在は、Excelでマニュアルを作成し、項目にリンクを貼って飛ばすようにしているのですが、それをFileMakerに取込、iPadで表示させることができないかを検討しています。 また工場内ではチェックシートや連絡メモなど使用しているのですが、場内は一定基準のチリや埃が除去されるようになっているため、チェックシート用の紙も専用の用紙を使用しています。そのチェックシートや連絡メモをiPadで行うことも検討しており膨大に使用している専用の用紙を無くすことができ、且つ入力したデータをそのままデータベース化することができるようになります。
実現すれば、工場の作業員が全員iPadを持って工場内を行き来する光景がみられることとなるでしょう。

 

6. 基本情報
使用しているバージョン FileMaker   Pro12, FileMaker Pro 12 Advanced, FileMaker Server 12
使用人数 勤怠管理使用者200人(今後500人へ増える予定)
デバイス Windows7, Mac, iPad
キーワード 勤怠管理

※現在ファイルメーカーのデータベースに格納されている件数は2,521,618件(2013年12月18日現在)
その後、一日1000件のペース増えています。

 

A工場(仮名)様 取材ご協力ありがとうございました。