Claris FileMaker 2026 -[ RAG処理を実行 ] スクリプトステップのデータの追加処理でテキストチャンクサイズをカスタマイズ可能に!
2026年07月06日 10:00 AM
Claris FileMaker 2026
Claris FileMaker 2025 で、RAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)機能が追加され、Claris FileMaker 2026 ではこの機能がさらに使いやすくなりました。その1つが [ RAG処理を実行 ] ステップのテキストチャンクサイズの指定です。
1. RAGとは
RAGとは、単にAIに質問するのではなく、あらかじめ登録した業務データや文書を検索し、その結果をもとにAIが回答を生成する仕組みです。
たとえば、社内マニュアルをRAGスペースに登録しておくと、ユーザーの自然文の質問に対して、該当する内容を検索し、その情報を基に回答を返すことができます。
つまりRAGは、FileMakerなどに蓄積されたデータを「AIが参照できる知識ベース」として活用する仕組みです。
ただし、その精度はAIモデルだけでなく、データの分割方法にも大きく左右されます。分割された文章の単位を「チャンク」と呼び、文章をチャンクに分割する処理を「チャンキング」と呼びます。
※ FileMaker でのRAG機能の基本的な使い方については、以下の過去記事をご参照ください。
参考:以前のブログ
2. 新機能でできるようになったこと
FileMaker 2026では、RAGスペースにデータを追加するときに、チャンクのサイズを指定できるようになりました。
従来は固定サイズで分割されるため、データに合わせた調整ができませんでした(固定長チャンキング)。
今回のアップデートにより、データの種類や内容に応じて最適なサイズに調整でき、検索精度・回答精度の向上が期待できます。
3. 今までの問題点
従来のRAG運用での問題は、固定長チャンキングによる文脈の分断でした。RAGでは、登録された文章をチャンクに分割し各チャンクをベクトル化して検索対象にします。ユーザーが質問すると、その質問に近いチャンクが検索され、AIの回答材料として使われます。
ここで問題になるのは、チャンクが意味のある単位で分かれていない場合です。
たとえば、次のような文章があったとします。
| 返品処理の注意点:返品処理を行う場合は、必ず承認者の確認を受けてから処理を実行してください。その処理が完了したら、ステータスを変更します。 |
この文章は、本来であれば「返品処理の注意点」という見出しと、その本文が一緒に扱われるべきです。
しかし、機械的に短い単位で分割されると、次のようなことが起こります。
| – 見出しと本文が別々のチャンクに分かれる – 文の途中でチャンクが切れる – 「その処理」「上記の内容」などの指示語だけが別チャンクに残る – 日本語の単語や意味のまとまりが途中で分断される |
この状態でRAG検索が行われると、AIに渡される情報が不完全になります。
たとえば、本文だけが検索にヒットして、見出しが含まれていない場合、AIは「何についての注意点なのか」を判断しにくくなります。
また、「その処理が完了したら、ステータスを変更します」というチャンクだけが検索された場合、「その処理」が何を指しているのか分かりません。
AIは前後の文脈を推測することになります。
RAGの目的は、AIに正確な参照情報を渡して、業務データに基づいた回答をさせることです。ところが、チャンクが不完全だと、AIが不足している情報を補完しようとします。
その結果、次のような問題が起きます。
| – 関連する情報が検索にヒットしにくい – 検索にヒットしても文脈が不足する – AIが推測で回答してしまう – 回答が不安定になる – 実際の業務データと異なる説明になる可能性がある |
つまり、チャンキングは、RAGの精度を左右する重要な設計要素ですが、従来はそれを制御することは難しくなっていました。
4. 今回の改修内容の詳細
FileMaker 2026では[ RAG処理を実行 ] ステップの「データを追加」処理で「テキストチャンクあたりのトークン」というオプションが追加されています。

これにより、RAGスペースへ追加するテキストやPDFについて、1つのチャンクに含めるトークン数を調整できます。
| 指定できるトークン | 75〜512トークン |
| 未指定の場合または0の場合 | Admin Console AIサーバーの設定値 (デフォルト:200) |
「テキストチャンクあたりのトークン」オプションを指定しない場合、または0を登録した場合はAdmin Consoleの[ AIモデルサーバー ] > [ 設定欄 ] > [ 詳細設定を表示 ] > [ RAG設定 ] > [ テキストチャンクあたりのトークン数 ]で指定した数値になります。(デフォルト:200)

5. 解決されたこと
FileMaker 2026の改善により、「文脈が途切れない状態でAIに情報を渡せる」ようになりました。
- 見出しと本文をまとめて扱える
従来は、見出しと本文が別々のチャンクに分かれ、AIが「何についての説明なのか分からない」状態になることがありました。
× 見出しと本文が別チャンクに分かれる
〇 見出し、本文が1チャンクに含まれる
- 指示語の参照先が切れにくい
業務マニュアルでは「それ」「この処理」「上記」などの指示語が頻繁に使われます。
これらが分断されることで、意味が不明確になるケースがありました。
× 「その処理が完了したら」だけが別チャンクにあり「その処理」の内容が不明
〇 指示語+参照先が同じチャンクに含まれる
- RAGの回答が安定しやすくなる
RAGでは、検索されたチャンクがそのままAIの回答材料になります。
チャンクに十分な文脈が含まれていないと、AIが推測で補完する必要が出てきますが
文脈を保つようなチャンクサイズを設定することで回答が安定します。
ここで具体的なチャンキングの例を見てみましょう。
例として次のようなポテトチップスの商品のカスタムAppの情報をRAGスペースに登録します。

「テキストチャンクあたりのトークン」オプションは指定せずにデータの登録をしてみます。
GetRAGSpaceInfo関数で確認すると各商品は2つのチャンクにわかれて登録されています。

RAGスペースに登録後「210円のものはどれですか?」と質問したところ200円のクラシック塩味ポテトチップスが回答に含まれてしまいました。

いったんRAGスペースにいれたデータは削除し「テキストチャンクあたりのトークン」を350に設定してデータの登録をしてみます。

今度は各商品情報が1つのチャンクに入りました。
「210円のものはどれですか?」の質問にも正確に回答が返ってきました。

6. 注意点
チャンクサイズを最大の512トークンにすれば常に良くなるわけではありません。
チャンクが大きすぎると、1つのチャンクに複数の話題が混ざってしまい、検索精度が下がる可能性があります。
たとえば、1つのチャンクの中に「返品処理」「請求処理」「在庫調整」がすべて含まれていると、AIはどの話題に関する情報なのか判断しにくくなります。
重要なのは、チャンクサイズを大きくすることではなく、意味のある単位で情報をまとめることです。
目安としては、次のように考えるとよいです。
| 種類 | 1チャンクの内容 |
| FAQ | 1つの質問と1つの回答がセット |
| 業務マニュアル | 見出し、説明、注意事項、例外条件がセット |
| 規程文書 | 第1項、第2項、ただし書き、例外条件などがまとまった条項単位 |
7. まとめ
FileMaker 2026では、RAGスペースにデータを追加するときに、チャンクサイズを指定できるようになりました。
これにより、従来のように固定的な分割に任せるのではなく、業務データの性質に応じて、AIに渡す文脈量を調整できます。「テキストチャンクあたりのトークン」は「データを追加」の呼び出し単位で指定できるため、レコード毎にチャンクサイズを変更することも可能です。
RAGでは、どのAIモデルを使うかも重要ですが、それ以上に「AIにどのような情報を渡すか」が重要です。
チャンクサイズの調整は、そのための実践的な改善機能です。
FileMakerでRAGを業務利用する場合は、単にデータを登録するだけでなく、チャンク設計を意識することが、回答精度を高めるための第一歩になります。
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