Claris FileMaker 2026 -[ RAG処理を実行ステップ ] 「データを追加」処理でドキュメントIDを返す機能がつきました!
2026年06月19日 10:00 AM
Claris FileMaker 2026
Claris FileMaker 2025 では、RAG機能が追加され、多くの場面でAI活用の幅が広がりました。そして Claris FileMaker 2026 では、このRAG機能がさらに使いやすく進化しています。
1. RAGとは
Claris FileMaker のRAG機能を使うと、FileMaker内のデータやPDFなどの文書をRAGスペースに登録し、その情報をもとにAIから回答を得ることができます。
RAGは、Retrieval-Augmented Generationの略で、日本語では「検索拡張生成」と呼ばれます。通常のAIチャットでは、AIモデルがもともと持っている知識や、プロンプトに直接入力された情報をもとに回答します。
一方、RAGでは、あらかじめ登録した業務データを検索し、その検索結果をAIに渡して回答を生成します。
FileMakerで考えると、次のようなイメージです。
- FileMakerのレコードやPDFをRAGスペースに登録する
- 登録されたデータがチャンクに分割され、ベクトル化される
- ユーザーが質問する
- 質問に近いチャンクがRAGスペースから検索される
- 検索結果をもとにAIが回答する
この仕組みにより、AIは一般的な知識だけでなく、FileMaker内の業務データを参照して回答できるようになります。
※RAG機能の基本的な使い方については、以下の過去記事をご参照ください。
参考:以前のブログ
RAGを実務で使う場合には、「登録したデータをどう管理するか」が非常に重要です。特にデータ更新時には、古い情報を残さず新しい情報に差し替える必要があります。
ここで重要になるのが、RAGスペースに登録されたデータを識別するためのドキュメントID です。
2. 今までの問題点
RAGデータの登録で問題になるのが、FileMakerのレコード更新時です。
たとえば、FileMakerに次のようなレコードがあったとします。

この内容をRAGスペースに登録した後、FileMaker側の内容の期限が次のように変更されたとします。

この場合、本来はRAGスペース内の古いデータを削除し、新しい内容を登録し直す必要があります。しかし、古いデータのドキュメントIDが分からないと、正確に削除できません。削除せず「データを追加」を繰り返すと、RAGスペース内に古い情報と新しい情報が混在する可能性があります。
たとえば、次のような状態です。

この状態でAIに「期限はいつですか?」と質問すると、検索結果に古い情報が混ざる可能性があります。結果として、AIが「6月30日です」と答えてしまうかもしれません。業務システムでは、日付、金額、ステータス、手順、規程など、最新情報であることが重要なデータが多くあります。古いチャンクが残ると、AIの回答精度だけでなく、信頼性そのものが下がります。
そのため、古いチャンクを削除してから新しいデータを追加する必要があります。RAGスペースから特定のドキュメントを削除するには、該当するドキュメントIDを指定します。FileMaker 2025で特定のドキュメントIDを把握するには、GetRAGSpaceInfo関数でRAGスペース全体の情報を取得し、そのJSONを解析して目的のデータを探す必要があり、これは実務上かなり扱いにくいものでした。
例:GetRAGSpaceInfo関数の取得値

※Claris FileMaker 2026での取得内容
3. 新機能でできるようになったこと
FileMaker 2026では[ RAG処理を実行 ]ステップの「データを追加」処理でデータを追加したときに、[応答のターゲット] を設定することで追加されたドキュメントIDやメタデータを JSON形式で取得できるようになりました。

[応答のターゲット] で変数やフィールドを指定しておくと「データを追加」の実行結果がJSONオブジェクトで返ります。
返されるJSONには、たとえば次のような情報が含まれます。
– ドキュメントID(RAGスペース内のデータを識別するためのキー)
– 使用された埋め込みモデル
– RAGスペースID
– 実行結果
– 使用トークン数などのメタデータ
ドキュメントIDをFileMakerカスタムAppのフィールドに保存しておけば、後からそのデータを削除したり、更新処理に利用したりできます。
4. 今回の改修内容の詳細
今回追加された[ RAG処理を実行 ]ステップの「データを追加」処理の[応答のターゲット]の内容を詳しく見ていきましょう。
返ってくるJSONオブジェクトは次のようなイメージです。

この中の id がドキュメントIDです。FileMaker 2025ではドキュメントIDは数値でしたが、FileMaker 2026ではUUID形式で返されるようになっています。
FileMaker側ではJSONGetElement関数を使ってドキュメントIDを取り出せます。

このドキュメントIDをフィールドなどに保存しておき、「データを取り除く」を実行する時は引数に次のようにJSONで設定することで対象のドキュメントを削除できます。
| {“id”: [“–ドキュメントID–“]} |
下の例ではJSONを変数に格納し「データを取り除く」処理の引数に渡しています。

ドキュメントIDをデータ追加時に取得できるようになったことで、RAGスペース内のデータ管理が大きく改善され、特に更新時に「古いデータを削除してから、新しいデータを追加する」という運用がしやすくなっています。
5. 推奨の運用
・更新時の推奨フロー
FileMakerのレコードとRAGスペース内のドキュメントIDを対応づけておくと、次のような更新処理が可能になります。
| 1.FileMakerのレコードを[ RAG処理を実行 ]ステップの「データを追加」でRAGスペースに登録する[応答のターゲット]からドキュメントIDを取得する 2.[応答のターゲット]からドキュメントIDを取得する 3. ドキュメントIDをFileMaker側のフィールドに保存する 4. レコード内容が更新されたら、保存済みドキュメントIDで旧データを削除する 5. 更新後の内容を「データを追加」で再登録する 6. 新しいドキュメントIDを保存する |
この流れにより、RAGスペース内に古いチャンクが残るリスクを下げられます。
従来は、更新のたびに「データを追加」を実行すると古いデータと新しいデータが混在する可能性がありましたが、FileMaker 2026では、ドキュメントIDを使って対象データを明確に削除できるため、RAGスペースの整合性を保ちやすくなります。
・FileMaker側に管理フィールドを持たせる
実務では、FileMaker側にRAG管理用のフィールドを用意しておくとよいです。
例えば次のようなフィールドです。

特に「ドキュメントID」を保存しておくと更新時や削除時にRAGスペース内の対象データを特定できます。
・削除してから再登録する運用
RAGスペース内のデータ更新では、既存データの上書きに任せるよりも、削除してから再登録する方が安全です。特に業務システムでは、古い情報が残ることは大きなリスクになります。
・レコード削除時にもRAGデータを削除
FileMaker側のレコードを削除したとき、RAGスペース内のデータも削除する必要があります。ドキュメントIDを保存しておけば、レコード削除前にそのIDを使ってRAGスペース側のデータを削除できます。
これにより、FileMaker側には存在しないのに、RAGスペースには古い情報が残っている、という状態を防ぎやすくなります。
6. 注意点:非同期(Async)では値の扱いに注意する
非同期で転送されるドキュメント(データ追加でファイル(Async)またはPDF(Async)を選択した場合)は、rag_space_id、model、および usage キーは処理が完了するまでこれらの値を使用できないため、”N/A” を返します。ドキュメントIDも取得できません。

大量のPDFを登録する場合などは、非同期処理を使いたくなる場面があります。
しかし、ドキュメントをFileMaker側で確実に管理したい場合は、[ 応答のターゲット ]に返る値の扱いを確認したうえで、同期処理と非同期処理を使い分ける必要があります。
7. まとめ
FileMaker 2026では、RAGスペースにデータを追加した際、ドキュメントIDをJSON形式で取得できるようになりました。
これは、RAGを実務で運用するうえで非常に重要な改善です。
RAGは、一度登録して終わりではありません。業務データは日々更新されるため、RAGスペース内のデータも、FileMaker側のレコード更新に合わせて更新・削除・再登録する必要があります。
ドキュメントIDを取得できるようになったことで、次のような運用が現実的になりました。
- FileMakerレコードとRAGドキュメントの紐づけ
- 更新時に古いRAGデータを削除
- 更新内容の再登録
- レコード削除に伴うRAGデータの削除
- RAGスペース内の不要データ削減
- AIの回答精度と信頼性の維持
FileMakerでRAGを本格的に活用する場合、ドキュメントIDの管理ができるととても使いやすくなります。
FileMaker 2026の改善により、RAGスペースは、FileMakerのレコードと連動した形で運用できるようになりました。
今後、FileMakerにAI機能を組み込む際は、データ追加時の[応答のターゲット]設定、ドキュメントIDの保存、「データを取り除く」による削除処理をセットで設計することが大切だと思います。
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