Excelからの脱却 ―工場と本社を“同じ画面”でつないだ、伴走型×内製開発の2年間―

2026年04月07日 12:00 PM

導入事例


ひとりの気づきが、組織の仕組みを動かした

今回ご紹介する事例は、とあるスポーツの老舗メーカーにおけるシステム導入事例です。

本社で発注を受け、工場で商品の開発・製造を行っていますおり、パッケージ商品だけでなく、オーダーメイド商品も取り扱っています。

その企業様では使用するシステムをすべてインハウス開発で行っておりました。その開発を弊社が伴走型でサポートした2年間をご紹介します。

まず、社内で利用するシステムの開発をしたのは、入社して8年のS様です。

入社当初から、生産管理の業務において、次のような課題を感じていらっしゃいました。

  • 本社での受注は、電話・FAX・メール・LINEなど複数の経路で受け付けており、注文内容はすべて紙に印刷し一元管理していた
  • 受注に関する問い合わせや変更が発生すると、保管された受注書の中から該当するものを探す必要があり、1件あたり約30分、場合によっては1日で3時間近く要していた
  • 受注情報を工場へ共有する際は、属人化したExcelに手入力し日次で工場に送信していたが、その操作は20年前に作成した担当者1名のみ
  • 工場側ではExcel入力にまで手が回らず、生産管理に必要な情報入力を本社側が代行する状況が続いていた
  • 生産管理情報が集約されているExcelのデータが正規化されておらず、データ活用が難しい状態だった

上記の状況から、日々業務に向き合う中で、現状のやり方を踏襲したまま業務を抜本的に効率化することは難しいと感じ続けていたそうです。

属人化のリスクと、課題の顕在化

転機となったのはS様が入社して4~5年目の頃でした。
まず、コロナ禍において本社の社員が順番に感染し、自宅待機を余儀なくされる事態となりました。
当時、Excelのデータ入力業務が属人化してしまっていることから、約1週間、受注管理や生産管理の基となるExcelのデータ更新が止まる事態となりました。

さらにその翌年には、唯一Excelのデータ入力ができていた担当者が入院し、約1か月間業務から離脱することになります。
このとき、S様が受注や生産管理のExcelへのデータ入力に関わる業務を引き継ぎ、対応することになりました。
いずれも不測の事態ではありましたが、この経験を通じて、S様は本社と工場それぞれの業務フローやデータの流れを深く理解するようになりました。
結果として、会社全体における「モノ」と「情報」の動きを、俯瞰できるようになったといいます。

また、ちょうどこの頃、Excelへデータ入力を担っていた担当者が定年を迎え再雇用となりました。
これをきっかけに、将来的には自分自身がその役割を引き継ぐことになる、という現実についても考え始めるようになりました。

こうした一連の経験を通じて、属人化したまま複雑なデータ管理を続けていくことは、組織として非効率な業務が固定化してしまうだけでなく、将来的にはS様自身が後任として Excelの維持管理に多くの時間をとられ続けるリスクが浮き彫りになりました。

「この仕組みを将来にわたって継続することは、企業にとっても自分にとっても望ましくない」
S様はそのように判断し、抜本的なシステム刷新を決断されました。

改革の第一歩は、業務の“見える化”から

新システム導入を決断した S様が最初に向き合ったのは「自分たちの業務を正しく知ること」でした。

まずは本社と工場それぞれの業務フローを描き出し、どの場面でどのデータが使われ、どのようにデータが流れていくのかについて、現状と新システム導入後における差異を可視化していきました。
そして、その過程で浮かび上がってきた業務課題やシステム化することで効率化できるポイントを洗い出し、社長や工場長との協議を繰り返し、少しずつ周囲の理解を得ながらシステム構築の方向性を固めていきました。

その中で S様が強く実感されたのが、「最適解が必ずしも自分の中にあるわけではない」ということでした。
当初S様はExcelで行っていた業務をすべて一つのシステムに統合することを想定していました。
社内で協議する中で、社長から1つの提案がありました。
それは、従来から本社で売上・請求管理に利用していた販売管理のパッケージシステムに新たにオプション機能を追加し、そのシステムで受注業務も行うという案です。

既に利用しているパッケージシステム上の受注データであれば、売上処理の際にそのままデータを参照できるため、担当者の作業時間は新たに増えることはない、という視点でした。

この時、S様は「自分が考えるスマートなシステム」と「実際に利用する立場で求められる利便性」との間に、ギャップが生じていることを実感されたそうです。

「データ入力の作業負担を増やさない」という視点は、現実的な判断だったため、受注管理はパッケージシステムで担い、パッケージシステムでは対応できない生産管理については新たにシステムを構築する方向へ方針を軌道修正することになりました。
そして、2つのシステムをどのように連動させるか、その方法を模索し始めました。

さらに、工場長との協議を通じて、既存の生産管理業務の流れを大きく変えずにシステム導入することの重要性や、万が一システムに不具合が発生した場合には工場の稼働に大きな影響が及ぶ可能性があることも明らかになりました。

そのため、システム開発経験のないS様は

・自分たちでも改修や不具合対応が行えること
・安定稼働を支える保守・ホスティングサービスが提供されていること

といった点を重視するようになり、ノーコード・ローコードの選択肢へと、検討の幅を広げていきました。

複数のプラットフォームを比較検討される中で、前職で使用していた Claris FileMaker の使い勝手の良さを思い出し、パートナー企業を探し始めることになりました。

自走できる開発力を、一緒につくる

Claris FileMaker のパートナー企業を比較する中で、
弊社の「一緒に開発しましょう」というトレーニング講座が目に留まったそうです。

「一緒に開発しましょう」トレーニングは、お客様の開発スキルや課題に応じて必要なサポートをお客様ごとにオリジナルで実施するサービスです。

「開発ノウハウを社内に蓄積でき、今後の機能追加も自分たちで行うことができる」
この点に強く共感いただき、お問い合わせいただきました。

そこで当時、弊社からは以下の2つのサービスをご提案しました。

Yes!開発ルール講座 
一緒に開発しましょう 

まず、S様は「Yes!開発ルール講座」を約3カ月受講し、開発の基本を習得していただきました。

「一緒に開発しましょう」トレーニングでは、S様にその時の課題をヒアリングの上、システム完成までに必要なサポートを2部構成で実施しました。

  1. 要件定義
  2. 開発お悩み相談会

本ブログでは「一緒に開発しましょう」トレーニングでのサポートした内容について詳細をご紹介します。

1. 要件定義

システムの全体像は事前に、S様と弊社との間である程度ゴールまでイメージはできていました。

しかし、いざS様が開発し始めようとしたところ、開発のご経験がなかったため、
「どこから開発に着手すればよいかわからない」というご相談をいただきました。
このようなお悩みは、初めてシステム開発に取り組まれる多くの方が抱えています。

できるだけ手戻りを少なく最適な進め方を模索されているS様に寄り添うべく、弊社から
「まずは一緒に要件定義を行い、開発の流れをつかみませんか?」
とご提案しました。

要件定義を始めるにあたり、弊社はまず Claris FileMaker に受注情報を連携させる必要があると考えました。

パッケージシステム上にデータがあるため、データを定期的にインポートさせる機能の実装について、一緒に要件や画面イメージをまとめることでS様が開発の流れをイメージできるようになり、ご自身で開発を自走できるようになるのではと考えご提案しました。

そういった経緯で、S様と一緒にデータのインポートについての要件定義が始まりました。

大元のパッケージシステムからどのような形式のデータが出力されるのか、インポートする頻度や回数などをヒアリングし、ユーザーが使いやすいシステムのイメージをお客様と一緒にまとめました。

また、このシステムの特徴として、パッケージシステム上で受注情報に不備のあるデータについてはそのまま Claris FileMaker へインポートせず、パッケージシステム上でデータを修正のうえClaris FileMaker へインポートし直すという点が挙げられます。

パッケージシステム上で、不備のないデータのみ出力することができなかったので、Claris FileMaker 側で工夫が必要な機能でしたが、どのように実装すればよいかS様と一緒に検討することができました。

― 要件定義の講座を受講して

S様に受講後の感想をお伺いしました。

『頭の中にぼんやりとあったデータの流れが、要件定義を通して具体的なシステム像に変わっていく過程から学ぶことがたくさんありました。

プロの開発者がどのように条件分岐を設計し、エラー制御を行っているのか、自分たちの実務レベルの視点で理解できたことが印象的でした。
システム開発が初めての場合、どうしても実装した機能が実際に動作することに目が行きがちで、条件分岐やエラー制御等の抜け漏れが出てしまいがちです。
経験豊富な開発者ならではの視点で細かい部分までフォローしていただけました。
「ここまで気を配るのか」と驚くほど丁寧で、実際の開発現場で行われている標準的な仕様設計を学べたことは大きな収穫でした。
多くの案件を経験してきたプロだからこそ持っている知識だと感心しました。

開発初心者の方ほど、開発に入る前の整理をプロと一緒に進めることには大きな価値があります。
・初期の段階で全体を整理してもらえるため、細かいミスや手戻りが減る
・プロの仕様設計の考え方を学ぶことができる
・後々問題になりそうな点を事前にリスクヘッジできる
・全体として質の高いシステムになり、結果的に無駄なコストを減らすことができる

特に、「自分だけでは設計の見落としが不安」「一人で設計していると限界を感じる」という方ほど、プロと一緒に要件定義してみることは非常におすすめだと思います。』

と仰っていただきました。

弊社で実施している相談会の様子

2.開発お悩み相談会

開発ルール講座や要件定義が進む中で、S様が悩まれていたのが、
「聞きたいことをうまく言語化できない」という点でした。

そこで、月1回の対面での相談会 を設け、直接コミュニケーションをとりながら疑問を明確にし、S様の疑問を1つずつ解決していきました。
1回あたり2時間、約1年かけて計12回の相談会を実施しています。

相談会までの間に、S様にはご質問事項をまとめていただき、相談会の中で回答させていただきました。
必要に応じて、弊社からも質問の意図を確認しながら回答し、S様の「言語化が難しいご質問」に1つ1つ丁寧に答えることを意識しました。
対話を重ねる中で、S様お一人では気づきづらい課題も弊社と一緒に考えることで、S様のスキルに合わせた開発Tipsとしてお渡しできるようにしました。

開始当初は、「製品ごとにカテゴリー化してフィルタリングしたい」といった基本的な内容から、リリースが近い頃ですと「クロス集計したい」といった難易度の高いご質問までいただくようになりました。
ですので、次回の相談会の際に資料やサンプルファイルなどもご用意しながら回答させていただきました。

― 相談会を経て

相談会後、S様はこのように仰っておられました。

『自分は「何がわからないのか」が分かるようになり、徐々に開発のスピードを上げていくことができました。定期的に直接話ができることへの安心感も大きかったです。

また、すべて一人で開発するのと、相談相手がいるのとではゴールまでの時間が全然違います。
例えば、自分で調べた結果、様々な開発のアプローチ方法があることが分かったとしても、「結局、自分たちの場合はどれがぴったりなのかわからない」といったことは初心者にはあるあるだと思います。そんなときに、30年のノウハウをもとに解決できる安心感がありました。
また、「ポータルで作れますか?」と相談した際に「ポータルでは実現できません」と開発に着手する前に事前に教えてもらえたので、工数を削減できたこともありました。

どのようなテーブル構成にしようか迷った際も、これまでプロとして様々なシステム開発に携わってきた知見をもとにアドバイスしてもらえたので、後々修正すると大掛かりになってしまうようなこともリスクヘッジできました

最短距離で、且つシステム開発の知識も身に着けながら開発を進めたい方にピッタリです。

書籍やWeb検索だけではなかなか辿り着けない、独学では気づきにくい「Claris FileMakerならではの考え方」をプロから自分の成長に合わせて教えてもらえるので、本業と並行しての開発者ではありますが、効率よく開発知識を身につけられたと思います。

また、Webには沢山サンプルファイルが転がってはいますが、自分が直面する課題にぴったりフィットしたサンプルはなかなか手に入りません。そういった物も自分のレベルに合わせて作成してもらえたのは、開発のスピードを上げられたことに大きく影響したと思います。

開発の中で悩みが出てきた際には、回答をすぐに教えてもらうこともあれば、ヒントだけもらって自分で考えて解決することもありました。なので、より成長を実感できるカリキュラムだったと思います。』

AIを取り入れた内製開発で、さらに高みへ

― 今後の展望について

S様に、今後の展望についてお伺いしました。

『約2年をかけて最低限Claris FileMakerでのシステム化が必要だった範囲を開発しました。
今後も継続してシステムをブラッシュアップさせていく予定です。

春からは在庫管理機能の追加も予定しており、そのことを相談したところ、一般的な在庫管理機能作成における注意点などを教えてもらい、すでに新しい発見がありました。
今後は、AIエージェント による開発サポートも実験的に取り入れながら、プロの視点と組み合わせて効率的に開発を進める方法を模索していきたいと考えています。』

↑開発中の在庫管理システム

プロと共創したからこそ身についた、改善し続ける内製力

今回の事例では、「本社と工場を“同じ画面”でつなぐ」ことを目指し、
S様が主体となって業務を整理し、伴走型支援を通じてインハウス開発における開発力を身につけられました。

  • 生産管理についてExcelから脱却
  • 自社でメンテナンスできる仕組みづくり
  • 約2年間かけてClaris FileMaker で段階的にシステムを開発
  • プロと一緒に学びながら進める伴走型が大きな効果を発揮

これらすべてを叶えることができました。

特に、
「自分たちで改善し続けられる力を得る」という点において、
伴走型×インハウス開発の価値が強く表れた事例だったと思います。

同じようなお悩みを抱えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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