販売管理を Claris FileMaker のカスタムAPPで行っている皆様、「インボイス制度」への対応はどうしていますか?
2022年11月02日 12:00 PM
tipsファイル
インボイス制度や電子帳簿保存法など世の中で騒がれていますが、ご対応は進んでいますでしょうか? 細かな点等は今回割愛させていただきますが、インボイス制度の主な内容とそれに伴う FileMaker カスタムAPP の改修ポイントをお伝えしたいと思います。
以下の内容でご説明していきます。
- 「インボイス制度」とは?
- 「適格請求書」とは?
- 「適格請求書」を発行するために
- 準備すること
- まとめ
1. 「インボイス制度」とは?
一言でいうと「複数税率に対応した仕⼊税額控除の方式」となります。
事業者が申告・納付する消費税額は「課税売上にかかる消費税額」から「課税仕入れ等にかかる消費税額」を差し引いて計算します。「課税仕入れ等にかかる消費税額を差し引くこと」が「仕⼊税額控除」です。
例えば、売上が税抜70,000円、仕入が税抜40,000円、消費税率10%の場合、売上にかかる消費税は7,000円、仕入にかかる消費税は4,000円です。
7,000-4,000=3,000 で、3,000円を申告・納付するわけですが、この「-4,000円」が「仕⼊税額控除」となります。「仕⼊税額控除」を受けるためには「適格請求書」を保存しておかなければならない、というのが重要なポイントです。
導入は 2023年10月1日 となります。ということは、あと約11ヶ月です。「1年近くあるから余裕じゃない?」と思っている皆さま、それは違います!
会社の決算期はいつでしょうか?期の途中で仕組みを変えるのは難しいです。
ということは次の決算期までに準備をしておかないといけないのではないでしょうか。
3月決算の会社であればあと半年を切っています。そういう弊社も3月決算です。
いますぐ準備を始めましょう。
2. 「適格請求書」とは?
では、「適格請求書」とはどういうものでしょうか?
ここが肝心のFileMaker改修に関わるメインの部分とも言えます。
1)項目の追加
下図のように適格請求書に記載しなければいけない項目が決まっています。しかし、現在発行している請求書にほとんどの項目が記載してあると思いますので、基本的には以下の2点を追加することになります。
・適格請求書発行事業者の登録番号
・税率毎の消費税率・合計額・消費税額
下図の①④⑤が該当します。
(図1)
※出典:「適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-」(令和4年7月)国税庁
2)消費税の計算方法の確認
消費税額の計算方法について、端数処理は1インボイスで税率毎に1回だけ、という決まりができました。下図の左「認められる例」をご参照ください。
・税率毎に合計金額を計算・・①
・①対して消費税率をかける・・②
※合計金額が税抜きの場合
・②に対して端数処理を行う
ということになります。
よって、下図の右「認められない例」のように、明細1行ごとに消費税の端数処理を行い、その合計額を請求書の消費税額としているような場合は、計算方法を変更する必要があります。
(図2)
※出典:「適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-」(令和4年7月)国税庁
0020006-027.pdf (nta.go.jp)
また、請求書と納品書等複数の書類をあわせて一つの適格請求書とすることも可能です。自社の請求手順に合う形でご検討ください。
3. 「適格請求書」を発行するために
記載項目にある「適格請求書発行事業者の登録番号」でお気づきと思いますが、「適格請求書発行事業者」になることが必要です。
そのためには管轄地の税務署へ登録申請を行わなければいけません。
申請期限は2023年3月31日です。
申請すると税務署で審査が行われ、その後登録され登録番号が発行される、という流れになります。無事登録されると国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で公表されます。
https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/index.html
4. 準備すること
1)請求書フォーマットの変更
『2.「適格請求書」とは?』に記載したとおり、変更が必要です。
①項目の追加
請求書フォーマットに以下を追加しましょう。
・適格請求書発行事業者の登録番号
・税率毎の消費税率・合計額・消費税額
②消費税の計算方法の変更
現在の消費税計算方法が新しい決まりと同じであれば問題ないのですが、違っている場合は、新しい期が始まるときに変更できるようにしておきましょう。
★FileMaker改修ポイント★
・①のレイアウト修正
・②の消費税計算式等の修正
※既存フィールドを確認し、不足しているフィールドがあれば追加もしましょう。
2)適格請求書発行事業者の登録申請
2023年3月31日までに登録の申請を行いましょう。
免税事業者の場合も登録することができますが、登録すると課税事業者となります。詳しくは税理士さんにご相談ください。
3)仕入先・購入先への確認
仕入先や購入先が適格請求書発行事業者になるかどうか、確認しておきましょう。
適格請求書発行事業者でない場合、仕入税額控除ができなくなります。以下のとおり経過措置がありますが、その間も控除額が全額ではないので仕入等にかかる消費税の処理も異なってきます。
2023年10月1日~2026年9月30日まで3年間・・・80%控除可能
2026年10月1日~2029年9月30日まで3年間・・・50%控除可能
2029年10月1日以後・・・控除不可
★FileMaker改修ポイント★
・仕入先・購入先の「事業者区分(仮称)」を追加
仕入先・購入先が適格請求書発行事業者なのか、免税事業者なのかを入力できるフィールドを追加し、管理できるようにしましょう。さらに適格請求書発行事業者登録番号のフィールドを追加してもよいかもしれません。
・免税事業者の消費税控除額計算機能を追加
FileMakerの販売管理でどこまで管理しているかにもよりますが、消費税の控除額を確認できるようになっている場合は、免税事業者の消費税控除額の計算機能を追加しておく等対応が必要でしょう。
4)適格請求書の保存
これまでも請求書を発行した際の控えや、受け取った請求書は保存されていると思いますので、それほど対応は変わらないように思います。
基本は、紙で発行・受け取ったものは紙で保存、電子で発行・受け取ったものは電子で保存、となります。ですが、電子帳簿保存法にもとづいて全て電子保存とするのもよいでしょう。
2023年10月になってから保存方法を考えるのでは対応が間に合いませんので、今から進めておきましょう。
★FileMaker改修ポイント★
・請求書発行方法の追加
請求書を何で発行したのか(紙に印刷し郵送したのか、PDFをメール添付したのか等)が分かるような項目を追加しましょう。
毎回手入力するのは手間ですので、スクリプトを作成、もしくは既存のスクリプトを修正して、発行時に自動設定されるようにしておくとよいでしょう。
5. まとめ
・インボイス制度は2023年10月1日開始です
・適格請求書発行事業者の登録申請期限は2023年3月31日です
・請求書は適格請求書のフォーマットへ変更しましょう
・適格請求書の保存方法をきめましょう
・仕入先・購入先が適格請求書発行事業者なのか確認しておきましょう
いかがでしたでしょうか。
ここに記載したことがすべてではありませんし、実際の導入時期までにルールが変更になる可能性もあるかもしれません。税理士さんにご相談しながら、余裕を持って準備を進めていきましょう。
また、FileMakerの改修については、簡単にできるものも多いですが、
「どう改修したらいいか分からない」「改修する時間が取れない」等ございましたら、弊社等のClaris Partnerへご相談いただければと思います。お気軽にお問い合わせください。