事例紹介:新型コロナウィルス患者DB~ローコードによるスピーディな開発~【琉球大学病院 産科婦人科】

2021年11月16日 03:53 PM

導入事例


今回、Claris FileMaker(以下FileMaker)導入事例としてご紹介するのは「琉球大学病院 産科婦人科」様の”新型コロナウィルス感染妊婦管理データベース“です。

◆お問い合わせのきっかけ

 

お問い合わせをいただいたのは今年の8月、新型コロナウィルス感染第5波の真っただ中でした。

「沖縄県でも新型コロナウィルスの感染者数が急増し、そのうち妊婦の割合も多くなっている。県内の他の病院とも連携して感染者情報を共有することが急務となっており、そのためのデータベースの開発を進めたい。」

というご相談をいただき、すぐに日程を調整し打ち合わせを実施しました。

お客様からのヒアリングを行い、キーワードになったのは「スピード」そして「ポストコロナ」でした。

 

 

◆開発はスピード重視!

 

仕様設計から開発~納品までの期間を1か月と定め、お客様との打ち合わせがスタートしました。お客様より、強くご要望いただいたのは「一日でも早くシステムが使えるようになること」でした。

国内全域で感染が拡大していく最中、一刻も早い情報共有がより多くの患者様の命を救うことに直結します。FileMakerであればローコード開発で、よりスピーディに開発に着手することができ、急を要するシステムでも短期間で納品をすることが可能です。

 

今回は要件定義の時間が短かったため、お客様の方で見本となるサンプルファイル(※)を作成していただき、それを元に要件定義を進めていきました。また、弊社社内でのこまめな打ち合わせや、お客様打ちあわせへの開発担当の同席といった綿密なコミュニケーションによって、弊社とお客様での開発イメージを約2週間程度ですり合わせることができました。

(※ 機能設計等はなく、レイアウトのイメージと各レイアウトにどのような情報を配置するかを簡単に記したもの)

また、週に一回の打ち合わせや、開発担当者の質問事項をまとめた一覧を確認し回答していただくなど頻繁にやりとりをすることができたことも要件定義のスピードアップの要因だったと感じます。

 

今回は複数の医療機関でデータベースを共有したいというご要望もあり、クラウドサーバーのご利用が必須となっていました。

そこで、本システムの利用規模に対応し、かつメンテナンスやトラブルシューティング等の対応ができるという面を鑑み、弊社のクラウドサービス「YFMcloud」を利用してシステムを運用することとなりました。

 

 

◆なぜ要件定義から納品まで1か月で完了できたのか?

 

スタート段階から「新型コロナウィルス感染患者のデータを登録する機能のみ」と、実装する機能を絞り、要件を明確化させ、他にもお客様から要望が上がっていたデータの分析機能は本稼働後にアジャイルで機能追加していく形で切り分けたことが開発スピード向上の一因でした。

また、最初にお伝えしたように弊社で仕様を提案しお客様にご検討いただくという従来の流れではなく、お客様で作成されたサンプルファイルのレイアウトをたたき台として、弊社にて入力など具体的な機能の提案を行うなど、一緒に仕様を考える流れにしたことにより、更に早く双方の開発イメージをすり合わせることができたと感じています。

 

 

◆「ポストコロナ」を見据えて

 

そして、開発に際してのもう一つのキーワードは「ポストコロナ」。

せっかく作ったシステムが新型コロナウィルスの感染収束によって使わないシステムとなってしまうようにはしたくない、というお客様のご要望のもと、ポストコロナ時代に向けてコロナウィルス以外の出産リスクの高い妊婦以下ハイリスク患者)の病状や妊娠周期管理もできるようにする、ということを踏まえたシステム開発を進めました。

 

ハイリスク患者が各施設にどれだけいるのかをそれぞれの施設が把握することで、患者の移送先をどうするのかの判断がスムーズにできるようになりました。

 

 

◆開発時の工夫

 

今回のシステムは様々な施設で幅広い年代のスタッフが触れる可能性があります。患者情報や検査結果など入力項目が多いため、スタッフにデータの入力作業を敬遠されるのではないかと、お客様は懸念していました。そのため、なるべく手打ちの入力を減らし、プルダウンやチェックボックスを多用して入力を平易にする、多くの色を用いてカラフルで見ていて楽しいデータベースにする、などでより入力のハードルを下げるように意識しました。

(画像内データはサンプル)

 

 

◆お客様のお声

 

開発会社をイエスウィキャンに決めた理由については何ですか?

―当科での不妊治療データベースは、FileMakerで構成されており、複数のファイルがある現状とクラウド管理を考えていたところ、沖縄県内でイエスウィキャンが実施したFileMakerのイベントに参加する機会があり勉強させていただきました。その際に、既存システムの改修についての相談をさせていただき、何度かやり取りを行っていました。

同時に、昨今のCovid-19の感染拡大が著しい状況となり、産婦人科周産母子センター銘苅教授が事態を案じ「(仮称)Covid-19情報共有データベース」についてもご相談をさせていただいたことが始まりです。 沖縄県内のコロナ妊婦対応施設の情報共有が急務であることから早急に対応できる業者に委託することが求められたため、新規で業者を探すより以前からお世話になっている業者に依頼する方がより早くデータベースの構築に着手できると判断し、イエスウィキャンに依頼することを決めました。

 

システム開発をする上で最も重要視したものは何ですか?

―開発当時はCovid-19 第5波の渦中であり、沖縄県内でのコロナ妊婦が増加している最中でした。もっとも重要視したのは、スピード感のあるApp開発です。

また、第5波が落ち着くのを見越して、ポストコロナ(第6波、新感染症など)や沖縄県内の周産期医療施設間のネットワークへの活用(NICUやハイリスク妊婦)を加味して開発を行いました。

 

導入後、業務にどのような効果がもたらされましたか。

―直感的に数字が分かり、グラフで視覚的に見ることができるので、琉球大学病院以外の施設のスタッフからも好評です。まだまだFileMakerを利用したことのない施設も多く、今回の 開発Appを利用してもらうために積極的に働きかけを行っています。現在は、沖縄県内のコロナ妊婦感染状況も落ち着いてきましたので、第6波・ポストコロナに備えて改修を行い、より良く利用しやすいデータベースづくりを検討しています。

 

 

◆編集後記◆

本開発のご相談をいただいたちょうどその頃、新型コロナウィルス第5波の感染拡大で、入院先すら見つからないほどの深刻な医療危機となっておりました。怪我や病気の方だけではなく出産を控えている妊婦さんも不安を抱えているというニュースを見た時、自分が担当している案件がとても社会的に大きな意味があるものだと再認識した記憶があります。

本システムの導入は新型コロナウィルス感染症対応における沖縄県内の各医療施設の負担の削減につながっており、沖縄県内で出産するお母さんや赤ちゃんの命を支えています。大変なこともありましたが、とても意義深い仕事ができたのではないかと思います。

また、開発にあたってお忙しい中でも沢山の時間を割いてくださった琉球大学病院の関係者の皆様に改めて感謝を申し上げます。沢山のご助言・ご協力本当にありがとうございました。