●ある日突然の出来事
「明日から10月だなー。今日で半期の締めくくり、さあがんばろう」
と思っていた朝9:30.そのとき社長から突然呼び出された。
「お前のやっているシステムの事業、やめようと思うんだ。」
そんなに驚かなかった。事業の絞込みを行い、本業である
営業アウトソーシングに力を注いでいくということは、以前から聞いていたからだ。
店頭公開を見据えて、商品を絞り込み、それをブラッシュアップしていくことは
当然のことである。そうは言っても私が責任者を務める事業の
「完全撤退」は少々驚いた。別に赤字を出しているわけでもなく
お客様も急成長とまではいかないまでも、着実に伸びていたからだ。
「システムのお客さんはどうなるんですか?」
「そこが相談なんだ。有城は会社に残って経営ボードを目指してがんばってもらうか、
それとも、事業とお客様をもってそのまま独立しても良いんだが・・・」
「いつまでに返事をしなければ?」
「今日中に、返事が欲しいんだが・・・」
うーん。今日中か・・・。●「社長なんか出来るはずない」
私が勤めていた会社は従業員が15人の小さな会社で、以前7年間勤めていた
リクルートとはまったく違うことばかりではじめのうちは戸惑った。
しかし5年間、社長やメンバーに恵まれたおかげで、自分の出来ること、
出来ないことがはっきりしてきて、その結果仕事や自分に自信のついてきた時期であった。
その中で痛感したことが「世の中の経営者は皆すごい!」ってことであった。
もちろんリクルートでも経営者の方と話す機会はたくさんあったが、そこでは、
それこそ社長と「腹を割って」話す機会が多かった。
というより、
リクルートと違いそうしないと、まったく相手にしていただけなかったのだ。
そういった出会いを5年も経験しているうちに「社長はすごい!」と思うようになった。
お会いした社長のほとんどが、私をはるかに超えた経験をしており、
まったく違った発想をしており、途方もない行動を取る方々であった。
そうなると自分では「自分は社長に到底なれないな」と思うのも当然であったと思う。
●日比谷線 神谷町
お客様の訪問も終わり、会社への帰りの電車の中で、ようやっと落ち着いて
考えることが出来るようになった。というより、それまで考えることを避けていた、と思う。
しかし、いすに座り地下鉄の窓に映った自分の顔を見ていると、いろいろな考えが頭をめぐった。
「自分に出来るのだろうか?」
「自分の好きな事業を諦めていいのだろうか?」
「同じ事業をしているメンバーになんて説明しようか・・・」
ふっとわれに返ると、神谷町の駅についていた。ドアが開いた瞬間
「会社をやってみよう。」
という言葉がふっと浮かんだのだった。
何の脈絡も無く、ただ突然と現れたのだった。
理由はわからない。ドアが開き終わったとき、そこから新しい空気が
流れ込んでくるように、唐突に、それも明確に思ったのだった。
しばらくは、その言葉の意味さえわからなかったと思う。
「会社を始める」「社長になる」
を交互につぶやいているうちに発車を知らせるベルが鳴った。
ドアが閉まった瞬間、急速に頭の中が回転し始めていた。
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