熊さん:最近「個人情報」だ、「住基ネット」だと、なんだかうるさいっすね。別に俺は何がばれてもいいっすよ。江戸っ子だもん、何にも隠し事は無いですよ。

ご隠居:そうかい。じゃあ熊さんが先日横丁の居酒屋で喧嘩した事を言いふらしても良いのかい?

熊さん:(ぎくっ)なんでそれを?

ご隠居:理由って言うと「おしんこ」を食った食わないが始まりだったそうじゃないか。

熊さん:・・・・。いいっすよ。誰に話しても。そんなこと。

ご隠居:熊さんの初恋は十の時、同じ長屋のよっちゃんだったよね。けど「鼻水たらしの熊さん嫌い」と言われて・・・

熊さん:わかりました、わかりました。勘弁してください。忘れてください。

ご隠居:ここからが問題だ。仮に私が「もう誰にも話さない」と決めたとしよう。しかし熊さんが顔を出すところ全部でその話をされたらどうする?

熊さん:横丁の酒屋、坂上の風呂屋でも?講釈聞いていても?そりゃ逃げ出したくなるね。九州とか西洋とかの、どこか遠くへ。

ご隠居:そうしてその行く先々で、それも全く知らない人からさっきのことを言われたら?

熊さん:この世から消えるしかないじゃないですか。だって赤の他人全部が俺の秘密を知ってるなんて。そんな想像も出来ないですよ。

ご隠居:それが一歩間違えば現実のことになってしまうのだ。この個人情報の問題は。ネットワークはとても便利だな。あっという間に地球の裏側の情報までリアルタイムに手に入る。そうして想像もつかないくらいの数のパソコンにその情報が蓄えられていくのだ。

熊さん:ホント、想像もつかないですね。ところで俺の秘密、どこで知ったんで?

ご隠居:だって熊さんのIDは「kuma」パスワードは「kou」。この長屋のみんな知ってることだよ。

熊さん:ぶ、ぶっ、奉行所に訴えてやる!